すばらしい本!

アナトール・フランス…とんでもない才能が出てきたな…と思ったらもう死んでるし。ノーベル文学賞とってるし。『ペンギンの島』というのが最近復刊されて、読んでる。素晴らしい時間を過ごさせてもらってます。

白水社から出ていて、1970年の近藤矩子の訳だ。この日本語が、また良い。ウソ歴史書の形をとった小説で、史実や聖句などの引用も多いため、検証や冗談由来の確認だけでもコストすごい。死ぬほど贅沢な翻訳だ。

物語は、死にかけ大聖者が悪魔に騙されて氷の大陸に飛ばされてしまうところから始まる。そこで目も耳も不自由な状態で、群れるペンギンたちを現地民と勘違いして洗礼を受けさせてしまう。ペンギン人が誕生し、彼らが暴力や略奪を経て私有財産、経済、主従、統治、と文明を進めていき、どのような歴史を歩んできたかが書かれている。

1900年に書かれているが、すでに「ミサイルの危機を煽ってマッチポンプ式に市民の支配権を掌握する方法」、「富裕層ほど累進課税を阻止するロビイングを行い、消費税のような無差別徴収を説く」みたいなことがズバズバ明快に鳥獣戯〜画〜されていく。

はっきり言って、こんなものがあるなら、僕の書くべきことなんて到底ないんじゃないか、と毎ページ思う。何もかもが素晴らしく、どの行もどの注釈も最高の時間をくれる。こんな本を読んでると、何を食べてもおいしく感じるし、何を飲んでもおいしく感じる。



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